“考えること”について考えてみよう

 間違うということ,わかるということ,わからないということ ―


◆「間違い」を通して,生徒も良く学ぶことができるが,先生も学ぶことができる。

 これらの事例が教えてくれることは何か?

  1. その問題について間違えることで,「わかったつもり」から脱し,むしろ以前よりも「良い理解」に到達することができる。
  2. そもそも,なぜそういう間違いが生じたのかという背後にある認識を探ることで,単に特定の 「その」問題を越えた,その人の全般的な知識観や学習観の問まで見えてくることがある。

 最初の「信号機の笑い話」と関連づけて考えてみると…… 

◆クリティカルシンキング ― 批判的に考える ― という考え方

 4コマまんがを使ったデモ実験 ― パソコン講習会講師の「吉田くん」のイメージを描く ―
  全員が男性をイメージしていたという結果を踏まえて。(『OL進化論』 3巻「はかられた!」より)


◆4コマまんがでクリティカルシンキングを学ぶこともできるという例

具体的にいくつかマンガをもとに解説
 *笑い話やギャグマンガの利点


◆心理学の研究からクリティカルシンキングを学ぶ
アメリカで起こったある殺人事件(キティ・ジェノビース事件)をきっかけにして生まれた心理学の研究をもとに,「他者の行動の原因」についてクリティカルに考えるということを考えてみよう。


◆今日の話しのポイント

*参考・推薦図書 今日の話しに関連する,読みやすくてためになる本を紹介します。

 


◆補足 ・・・心理学について

*心理学の勉強に数学が必要なの?
今日の講義の中で統計の例をあげたとき,大学で心理学を学ぶ際には,統計のような数学も必須だと話しましたが,これはたぶん,高校生のみなさんにとっては初耳だったと思いますし,心理学を志望していた人は多少なりとショックを受けたかもしれません。別に脅かすつもりはなかったのですが,話しを面白くするために「心理学は理系である!」という面をやや強調してしまいました。
 ・・・というのも,皆さんに最初に書いてもらったアンケートでもそうだったのですが,一般に高校生達の心理学のイメージというのは,カウンセリングとか,心理テストとか,犯罪心理といった特殊な領域に片寄りすぎていますので,そのイメージを変えてもらうために,あえて理数的な要素を強調したいと思ったわけです。

*心理学は多様な学問
心理学には「理」という文字が含まれていることからも科学(サイエンス)であることは確かなのですが,文系か理系かと言いますと,どちらでもあります。皆さんが高校でやっている様々な教科−−国語,数学,理科,社会,英語をはじめ,保健,情報科,芸術,家庭科等の教科のうち,どれに一番近いかと聞かれたら,やはり「すべてに関わる」としか答えようがありません。その意味では「総合的な学習」が一番近いのかもしれません。これが心理学という学問の大きな特徴だと思います。他の学問の多くは,高校までの教科のどれかの科目に基礎を置いていると思います。しかし,こと心理学に関しては,すべてなのです。心理学という学問は,人の思考・行動・感情に関わるあらゆる領域をカバーします。神経細胞や身体の機能,生物としての進化といった視点から人間を見ていくアプローチもあれば,人間関係の中での言葉のやり取りや,今日の前半の話しのように思考や学習を扱うアプローチもあります。また,今日の後半に取り上げた“キティ・ジェノビーズ事件”のように社会生活の中での人間行動を考えることもあります。試しに,現在,「心理学」という学問として括られているものの下位分野を挙げてみましょう。

注意していただきたいのは,これらの分野はそれぞれ別個のものではなく,互いにオーバーラップしています。たとえば,脳や神経を扱う生理・神経心理学は認知心理学や,性格心理学,発達心理学,臨床心理学等の基礎になっています。また,発達心理学は子どもから大人,そして老人へという人間の変化を扱いますが,そこで具体的に扱われているのは,認知や感情や社会的行動などの発達的変化なのです。このように,様々な分野が複雑に絡み合っているのです。

もう一つ重要なことは,分野はこのようにさまざまですが,研究方法としては多くの場合,実験や調査を行うことが共通だという点です。そこでは測定データを数値化し,統計的に処理をします。ですから,数学も必要とされるわけです。また,実験装置を制御したり,統計処理のために工学的な機器やコンピュータを利用することもしばしばあります。

*統計やコンピュータはあくまで手段
 しかし,その背後にある論理的・数学的な思考法は人間の行動や心を考えていく上で重要

上でも述べたように,心理学ではその方法として数学(統計)やコンピュータ等の機器操作を使うことは必要になってきますが,それはあくまで手段としてであって,それ自体が目的ではありません。手段によって目的が振り回されてしまうのは本末転倒です。今日の話しの中で私は「心理学には数学や理科の勉強も必要ですよ」と注意しましたが,自分が本当に人間の心に興味あり,心理学がやりたいのならば,たとえあなたが理数系科目が苦手だったとしても,あきらめてしまうのではなく,必要に応じて頑張ろうと思えばよいのです。実際,心理学が完全な文系学問だと思いこんで入ってきた“自称”数学オンチ・機械オンチの大学生諸君も何とかやっています。

しかし,それでは数学などはただの手段で,それ以上の意味がないのかといえば,必ずしもそうとは言えません。たとえば,統計学の基礎になっている論理学的な思考法や確率論的な考え方は,人間の行動を考えていく上でも重要な観点になっています。そのような考え方が身に付いていないと,少数事例の観察や目の前のわずかなデータからの素朴な直観や,思い込みに飲み込まれてしまうのです(世間一般に広まっている“俗流心理学”の多くはこのレベルに留まっています)。

もちろん,心理学を学び,研究していく上では,人の行動や言葉から気持ちの機微を感じ取る力や,考え方−論理・思想・哲学−を読みとる力,歴史,文化,風土といった社会の中での人間行動を見る力も必要です。ですから,これから大学で心理学を学びたいと思っている高校生の皆さんは,「人間のことを本当にきちんと考えようとするのなら,文系・理系,さらに保健体育や情報や家庭科や芸術等も含めたあらゆる科目に対してのトータルな目配りが大切なんだ,そのような科目のさまざまな観点から人間にアプローチしていくことが必要なんだ」と考えて勉強をするようにしてください。

*心理学のホントのところを知りたい人は
 次の本を読んでみてください。