電話のとりつぎ
井上雅彦
 電話によるコミュニケーションは、視覚的な手がかりとして相手の行動や文脈を活用することは不可能で、相手の言葉だけを手がかりにコミュニケーションする必要があります。表1のように指導目標となるやりとりを設定した。
                             表1 指導目標とされる電話の取り次ぎ技能
 
教師   生徒 
ダイアルする 呼び出し音が鳴ったら受話器をとる
「もしもしAさんですか」 「はいそうです」
「○○さん(人名)いますか」 「おります」
「○○さんとかわってください」 「わかりました」
受話器をおく
指定された人を呼びに行く
「○○さん電話よ」
表2  台詞カード
 ▲▲先生(教師名) Aさん(生徒名)
「もしもしAさんですか」    
「○○さん(人名)いますか」  
「○○さんとかわってください」
「はいそうです」 
「おります」 
「わかりました」
 
              
表3 台詞カードによる会話練習のステップ
1台詞カードの自分の台詞を教師の指さしによって読む
2台詞カードの自分の台詞を教師の指さしなしで読む
3台詞カードありで生徒の台詞後1秒あけて次の台詞を読む
4台詞カードありで生徒の台詞後3秒あけて次の台詞を読む
5台詞カードなしで行う

 
 台詞でのやりとりが可能になったら、実際に電話機を使って指導を行ないます。学校や施設などで取り組む場合は、できるだけ本物に近い内線電話などを利用します。この際、最初は表1の人名に相当する人に電話機のすぐそばにいてもらい、簡単に取り次げるようにします。そして、できるようになったら距離を徐々に離していき、最終的には別室にいても取り次げるようにしていきます。また、取り次ぐ対象(人名)も徐々にバリエーションを増やしていき、取り次ぐ人を複数待機してもらっておきます。さらに、かける人を変えたり、台詞の間に「Aさん元気ですか」のように指導した言葉以外のバリエーションも加えていくようにします。大学で行った事例では、障害のことや今回の指導についての情報はまったく知らない学生に「今から○○さんのお宅に電話してお母さんに取り次いでもらってください」とだけ教示して、電話をかけてもらい、生徒がどれくらい取り次げるか調べました。その結果、知らない人からの様々な会話形態においてもかなりの部分で対応可能であるという結果がでました。指導形態としては小集団で実施することも可能でしょう。そして、最終的には家族の協力を経て家庭でも取り次げるように移行していくことが必要です。
                                                               ver.1 2001/02/05

 
 

                 

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