プラモデル作成の指導
石原真実・井上雅彦
1.プラモデル作成の指導にあたって
 余暇活動の一つして、ロボットやミニカーが好きな児童にプラモデル作成の指導を試みた。プラモデル作成のためには、説明書を見て工作するスキルと、手先の器用さが必要とされた。
2.対象児
 A:小学6年生の自閉症男児。ロボットが好きで、指導開始前は家でカーロボットの合体等で遊んでいたが、合体のしかたは同じパターンで繰     り返されており、新しいパターンを自分で説明書を見て作るということは行えていなかった。手先はある程度器用であった。
 B:小学6年生の軽度知的障害男児。ミニカーが好きであった。余暇活動として、テレビゲーム、マンガを読む、書く等で遊んでいたがレパートリーは少なかった。手先が不器用で、細かい作業をすることを苦手としていた。
3.指導目標
 プラモデル作成にあたって、一人で説明書を見ながらプラモデルを作成できることが目標とされた。また、それが余暇活動となりえるために、余暇におけるプラモデルの購入、作成が自発されることも目標とされた。 
4.指導方法
〈チョロQ作成〉
チョロQとは、株式会社タカラから発売されているスーパーカスタマブルチョロQというモーター付きのミニカーのことである。作成の説明はパッケージの裏に表記してあり、ステップは4つ(@本体株の組立とゼンマイの取り付け、A本体上部の取り付け、Bバンパーの取り付け、C完成)に分けられていた。対象児A、Bともプラモデル作成は初めてであり、課題の取り組み易さを考慮して、AはステップAまで(車体)とシール貼りで完成とし、BはステップCまで(車体とバンパー)とシール貼りで完成とした。
1)課題分析
   1.パッケージを開ける
   2.パーツを出す
   3.説明書のステップ@に表記されているパーツを用意する
   4.ステップ@の表記に沿って組み立てる
   5.ステップAに表記されているパーツを用意する
   6.ステップAに沿って組み立てる
 (7.ステップBに表記されているパーツを用意する)
 (8.ステップBに沿って組み立てる)
   9.シールを貼る10.完成した車を走らせる
 
2)指導
 余暇活動につなげるために、課題にできるだけ抵抗なく失敗せず取り組めるよう、最初は、説明書を最も分かりやすくしたものを用意した。それは、既存の説明書を約32倍に拡大コピーし、1ステップごとに1枚の説明書を提示できるように各ステップに切り分け、それに実物と同じ色を色鉛筆で塗ったものであった。導入の際には、すでに完成している別のチョロQを見せて、今からこと同じ物を作ることを教示した。
 まず、ステップ@の説明書を提示し、作成させた。パーツを用意する際には、説明書に表記されている番号とパーツの横についている番号を声に出してマッチングさせるようにした。対象児がどのパーツか分からなくて反応がない場合、また別の物を用意しようとする場合には指差しをして正しいパーツを教え、番号を読ませて確認した。組み立てる際には、その前に一度、説明書に注目させた。それは、特にAの場合、説明書なしで勝手に合体し間違えてしまうことがあるので注意して行った。組み立て方が分からなくて反応がない場合、また間違って組み立ててしまった場合は、対象児と全く同じ別のチョロQでそのステップのモデルを示した。それでも失敗する場合は、身体介助して行った。その後のステップも同じ手続きで行った。
 シール貼りはパッケージを直接見て行った。パッケージの表に、シールの番号とその貼るべき場所が表記してあり、その上に完成しシールも貼ってあるチョロQの画像が載っていた。シールがはがしにくいようだったので、予め台紙を曲げて柔らかくし、はがしやすくなるようにしておいた。 完成し走らせる際には、その前に走らせ方の説明書を8倍に拡大コピーし読ませた。チョロQは、全部でAが5体、Bが4体作成した。3体目辺りから、説明書を各ステップで切り分けずに、全ステップが1枚に表記してあり、さらに配色もない説明書を使用した。大きさは8倍に拡大コピーした物で、全ステップがA4で1枚程度に収まる程度とした
  作成にあたって、パーツの用意の際は、パーツの種類が比較的分かりやすく数も少なかったので、A、Bとも1回指導するとスムーズにできるようになった。組み立ての際は、力の入れ具合のコントロールがつかない、間違った方向で無理に組み立ててしまい分解できない等の難しさがあった。特にBの場合、手先の不器用さもあり、時々手先が引きつる様子があったので、ストレッチを入れながら行った。シールを貼る際は、非常に小さなシールであるため、器用さが必要とされたが、A、Bとも根気よく行っていた。走らせる際は、モーターを巻きすぎて壊してしまう、離すタイミングが難しい等の様子が最初見られたが、回を重ねるごとにできるようになった。
 Aは5体目において、指導者の援助なく自力で作り上げることができた。作成の時間も非常に早くなった。作成後、常に、「次はSC−03(チョロQの番号)?」との質問があり、AがチョロQ作成の活動を楽しみにしていることが伺えた。また、母親から、好んでいるカーロボットにおいて、指導前までは車から小さいロボットに変形させることを行っていたが、指導後を説明書を見ながら、小さいロボットを合体させて大きいロボットを作るようになったと報告された。Bは3体目で自力で完成できたので、4体目は宿題にして余暇において作成することとした。BもチョロQ作成を楽しみにしており、作成したものでよく遊んでいると母親から報告された。
 
〈ガンダム作成〉
  ガンダムとは、株式会社バンダイから発売されているプラモデルで、本指導ではSDガンダムのG−ZEROシリーズを作成した。説明書があり、ステップは7つ(@頭、A腕、B足、C胴体、D本体完成、E武器、F武器の持たせ方)ほどに分けられていた。A、Bともに、チョロQ作成により、プラモデルを作ること、説明書を見ることという基本姿勢ができていたので、違う説明書を見て違うプラモデルを作成することを目標として行われた。ステップもパーツの数も一気に増えたのでより細かい指導が必要と考えられた。
1)課題分析


1.箱のフタを開けて中身を取り出す
2.説明書を広げる
3.袋を破り、パーツを取り出す
4.説明書のステップ@に表記されているパーツを用意する   用意したパーツの番号は鉛筆でチェックする
5.パーツをはずす(ハサミやペンチを使用してもよい)
6.ステップ@の表記に沿って組み立てる
7.ステップ@にあるシールを貼る
8.ステップABCDEも同様
9.ステップFで、武器の持たせ方を変形させて行う

2)指導
 作成と指導の手続きはチョロQ作成と同じであった。なお、パーツの数が増え見落とすパーツが出てくる可能性から、はずしたパーツの番号を鉛筆でチェックしていくという指導も試みた。5秒たってもチェックせず反応がない場合、または、チェックせずに次に取りかかろうとした場合は「はずしたらどうするの?」−鉛筆を指差す−「チェックして」と言いつつ鉛筆を指差す、という援助を段階的に導入した。パーツが細かくなったことから、はずす際には、ハサミとペンチも用意しておき、好きなときに使ってよいこととし、また使うことを勧め、併せて使い方も指導した。武器を持たせる際には、箱に載っている様々な変形パターンと角度の画像を見せ、それぞれ本体とマッチングさせて、好きなパターンにしてよいことを教示した。
  指導では、余暇活動につなげるため、また、プラモデルという試行錯誤のおもしろさを考慮し、組立の際は、できるだけ本人に任せ、3回続けて失敗するようであれば、正しい組立方を指導するよう試みた。ガンダムは、全部でAが4体、Bも4体作成した。作成にあたって、パーツチェックの際は、AもBもたびたび忘れることがあったが、3体目でAは5割以上、Bは9割以上チェックが自発して行われた。パーツをはずす際は、手で取ったり、手で取ったために出っ張った部分を歯で取ったり、ハサミやペンチを使用したりといろいろな方略が用いられていた。ペンチの使用は、裏表の使い分けが難しく援助を必要とした。組み立てる際は、組み立てる矢印に注目させて行った。Aにおいては最初、対になっているものについては説明書を見ず直ぐに組立てしまい間に別のパーツを挟んで組み立てることができなくなること、またBにおいては組み立てる方向を説明書で表記してある方向とマッチングさせることが難しい等があったが、回を重ねるごとにエラーなく行えるようになった。シール貼りの際はチェックを忘れることが多くあった。
 Aは4体目において、指導者の援助なく自力で作り上げることが可能となり、チェックなしでも完成することができたが、シールは必要な所以外は貼られなかった。また、母親より、休み中、両親が購入してきた車のプラモデルを父親と一緒に作成したこと、その際ほとんど援助なしで行えたこと、本人もそれを大切にしていることが報告された。
  Bは3体目で、ほとんど指導者の援助なく自力で作り上げることができた。手先が引きつることもなくなり、最初と比べると大分器用になってきたことが伺えた。また、「次も作りたい」と本人から自発したことから、3体目から、自分で玩具屋に行き、作りたいガンダムを購入してくるという買い物指導も併せて行われた(金銭スキルは以前に指導済み)。
5.指導の発展
 プラモデル作成が余暇活動の一つとして機能し、維持していくためには、学習したもの以外の様々なパターンのプラモデル作成の手順が説明書を見ながら理解でき、ある程度自力で作成できること、できあがったものが本人の好みに合ったものであり、その後も大切にされていること、玩具屋で作りたいプラモデルを選び購入するスキルがあること、などが考えられる。あわせて、それらの活動が自発されるような機会が日常的に用意されていることが必要と考えられる。
                                                                                                                                                                                                                          ver.1 2001/03/14

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