発達障害心理臨床特講No6
 
6 発達障害児における学齢期の援助
 
1)学習障害(Learning Disabilities )
(1)学習障害の定義
 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議(1999)による

 

学習障害(Learning Disorders)の診断基準(DSM−W)

○読字障害 Reading Disorder
A.読みの正確さと理解力についての個別施行による標準化検査で測定された 読みの到達度が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に 応じて期待されるものより十分に低い。
B.基準Aの障害が読字能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害しているC.感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困難は通常それに伴うものより過剰 である
○算数障害 Mathematics Disorder
A.個別施行による標準化検査で測定された算数の能力が、その人の生活年齢 、測定された知能、年齢に相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に 低い
B.基準Aの障害が算数能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している
C.感覚器の欠陥が存在する場合には、算数能力の困難は通常それに伴うものより過剰である
○書字表出障害 Disorder of Written Expressi on
A.個別施行による標準化検査(あるいは書字能力の機能評価)で測定された 書字能力が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて、期待されるものより十分に低い
B.基準Aの障害が文章を書くことを必要とする学業成績や日常の活動(例: 文法的に正しい文や構成された短い記事を書くこと)を著明に妨害している
C.感覚器の欠陥が存在する場合、書字能力の困難が通常それに伴うものより過剰である

 

(2)出現率・予後
 障害としては軽度であり、判定基準やシステムがいまだに不十分なことなどから正確に数値は不明である。合衆国やカナダでは4〜5%が教育行政的な援助の対象となっている。わが国では2%前後といわれている。予後の研究については未だ十分ではない
 
(3)実態把握・指導形態
学習障害の判断・実態把握基準(試案) 上記協力者会議による
 以下要約
 
   I 判断・実態把握の体制・手続き
@学校における実態把握
・校長、教頭、担任教師、その他必要と思われる者(学年主任、教育相談担当教諭、養護 教諭、前担任教師等)、校外の専門知識を有する者などが構成する校内委員会の設置
・実態把握の契機
[1] 担任教師が特異な学習困難に気付く。
[2] 保護者から学習障害の疑いがあるとの申し出がある。
・校内委員会で実態把握を行い、専門家チームに判断を求めるかどうか検討する。
・校長が専門家チームに判断を求める前には、保護者に十分な説明を行い了解を確認する。
 
A専門家チームにおける判断
・専門家チームは、特殊教育センター等における専門家による相談機関と位置づけ、都道 府県又は政令指定都市の教育委員会に設ける。
・構成員としては、学習障害に関する専門的知識を有する教育委員会の職員、特殊教育担 当教員、通常の学級の担当教員、心理学の専門家、医師など
・専門的意見
[1] 学習障害か否かの判断
[2] 望ましい教育的対応の内容
 
判断・実態把握基準と留意事項
1. 校内委員会における実態把握基準と留意事項
(1)実態把握のための基準
 A.特異な学習困難があること
[1] 国語又は算数(数学)(以下「国語等」という。)の基礎的能力に著しい遅れがある。
[2] 全般的な知的発達に遅れがない。
 B.他の障害や環境的な要因が直接の原因ではないこと
(2)実態把握に当たっての留意事項
[1] 学習障害と疑われる状態が一時的でないことを確認する。
[2] 専門家チームへ判断を求める前には、保護者の了解を確認する。
・校内委員会と保護者の見解が一致しなければ、原則として専門家チームへの判断の申し出は行わない。ただし、保護者が希望しない場合でも、児童生徒の学習の状況によっては、必要に応じて再度適宜協議し、専門家チームの判断を求めることを勧める。
[3] 行動の自己調整や対人関係の問題が併存する場合には、次の事項にも配慮する。
・行動の自己調整や対人関係の問題が併存する場合もあるので、それへの十分な配慮が必要である。当面、行動の自己調整や対人関係の問題のみへの対応が必要と考えられる児童生徒も、それらの問題が一応の解決を見た後で特異な学習困難か明らかになる場合もあることに留意する。
・行動の問題が学習障害と重複している疑いがあると考える場合は、学校における生活態度、保護者から聞いた生活態度、生育歴、環境上の問題等を記述した資料を収集する。
[4] 学習障害の判断は、専門家チームに委ね、学校では行わない。
 
2. 専門家チームにおける判断基準と留意事項
(1)判断基準
次の判断に基づき、原則としてチーム全員の了解に基づき判断を行う。
A.知的能力の評価
[1] 全般的な知的発達の遅れがない。
[2] 認知能力のアンバランスがある。
B.国語等の基礎的能力の評価
* 国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがある。
・校内委員会が提出した資料から、国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがあることと、その特徴を把握する。
 
C.医学的な評価
D.他の障害や環境的要因が直接的原因でないことの判断
[1] 収集された資料から、他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないことを確認する。
[2] 他の障害の診断をする場合には次の事項に留意する。
(2)専門的意見の内容と留意事項
A.専門的意見の内容
* 専門家チームは、(1)の基準により学習障害と判断した場合は、以下の留意点に配慮しつつ、望ましい教育的対応についての専門的意見を述べる。
専門的意見の内容には、次の内容が含まれる。
[1] 学習障害と判断した根拠
[2] 指導を行うにふさわしい教育形態
[3] 教育内容についての指導助言
[4] 教育に際しての留意事項
B.専門的意見の留意事項
[1] 他障害との重複の際の留意事項
・他障害と学習障害が重複している場合にも、必要に応じて、学習障害児として配慮するべき内容等を意見の中で述べる。
・行動の自己調整や対人関係の問題が顕著である学習障害児の場合、必要に応じて、情緒障害等のための特殊学級における教育又は通級による指導を行うことも考えられる旨の意見を述べる。
[2] 通常の学級における指導が適切な場合の留意事項
・学習上の困難の程度に応じて、必要に応じて、担任が留意して指導を行うことが適当か、ティームティーチングによる指導か適当かの意見を述べる。
[3] 通常の学級以外の場での指導が適切な場合の留意事項
・通常の授業時間以外の個別指導が必要な場合には、必要に応じて、個別指導の方法について意見を述べる。
[4] 専門的意見の適用期間
・学習障害児として通常の学級における指導又は通常の学級以外での指導を行う際の特別の配慮に関する専門的意見については、概ね2?3年の見通しをもって行うこととする。
(3)専門家チームの意見に対する学校の対応
学校は、専門家チームの意見を踏まえて適切に対応する。特殊教育による対応が必要な場合は、保護者の理解を得つつ、市町村教育委員会に所要の手続きを行う。なお、校内委員会は、必要に応じて、随時専門家チームの意見を再度求めることができる。