それぞれの地を歩いてみて、はじめてわかることがあります。

   2004年11月1日                               2004年11月14日

 小千谷から長岡への帰路にて                                豊岡にて:堤防決壊で電柱が傾く

 

        災害後の子どもの心のケア      JR尼崎列車脱線事故後の心のケア

 

人間は、本来、困難な状況を乗り越える回復力を持っています。

その回復力を引き出すことが大切であり、その回復力を引き出す活動が 「心のケア」活動です。

 

学校教育活動や家庭での関わりを通じて、子どもの回復力を引き出すことができます。先生・保 護者・地域の人・ボランティア・医療スタッフ・スクールカウンセラー(臨床心理士)みんなで力を合わせて、一緒に困難を乗りこえていきましょう。このサイトは、災害(新潟中越地震・各地豪雨・台風23号被害) 後の子どもたちの心のケアをサポートします。

 

私たちは、災害後の子どもたちの心のケアに携わってきた経験から、大人たちが、いまできることを、お伝えします。

 

1,子ども自身が災害ストレスにも対処することができるという自信が持てるようサポートします。そのために、子どもたちにストレスへの対処方法やリラクセーションの方法を伝えます。 それを『セルフケア』といいます。

2,さまざまなストレス反応は、危機的な出来事に対する当然の反応という知識を、やりとりの中で、わかりやすく伝えます。一方的に伝えるだけでは不十分で、対話による働きかけをします。例えば、マヒや高揚感の反応に「自分は冷たい人間だ」といった自責感情をもってしまうことがあります。それを防ぐことも大切なことです。そういった災害ストレスにあったときの心身の反応と望しい対処の仕方を学ぶことを『心理教育』と呼んでいます。

 

3,友だち・教師・保護者・地域の人たちとのよいかかわりが、ストレス反応を和らげます。人間は人から守られていると感じるときに安心することができます。強いストレス反応が生じていても、親や教師といった周りの大人が、落ち着いてかかわれば、反応は収まっていきます。このように、『ひとと人の絆』が困難を乗りこえる最も大きな力になります。阪神淡路大震災では、尊い命・建物や大切なものを失いました。しかし、ひとと人の絆の大切さを、身をもって学びました。

 

4,遊ぶ、楽しいことに熱中する、身体を動かす、背伸び、ストレッチなど日常活用している望ましいストレス対処に加えて、『落ち着くためのリラクセーション技法』 (漸進性弛緩法、イメージ呼吸法、肩や腰の動作法)が効果的です。 実際の緊張や不安を和らげることができる体験が、ストレスに対処できるという自信を生み出し、セルフケアへと結びつきます。

 

5,災害ストレスを乗りこえるために「がんばる」ことが大切です。しかし、「がんばり方」を考えてみましょう。いつもいつも全身に力をいれてがんばり続けると、身体がもちません。そこで、ながつづきするがんばり方、「がんばって、休む」といった気持ちの切り替えを身につけることが大切です。また、余震や危険に対して、『適切に身構える』ことの大切さも提案 しましょう。

 

6,いつも「じしんがくるぞ!・こわい!」「また、すいがいが・・・」と思い続けると、身体が緊張し続けます。「じしんがくるぞ!こわい!」「また、すいがいが・・」と考えていると、それが、ストレス反応を生みます。余震が続いたり、雨が降ったりすると、恐怖は当然の反応ですが、 「余震は必ずなくなっていきます」「余震があったときは、こうやって自分の身を守り (防災訓練)ます」「○○川は、しっかりした堤防を築きましたから、もう大丈夫」と、安全と安心のメッセージを送ってみてはどうでしょう。出来事に対す『受けとめ方』によって、ストレス反応のあらわれ方が、ちがってきます。

7,ストレス対処には、問題に立ち向かう対処(問題焦点型対処)と気持ちについての対処(情動焦点型対処)の2つがあります。「受けとめ方」を変えるには、防災に対する正しい知識が必要です。子どもにかりそめの安心を与えてはいけないからです。防災訓練を実施するときに、同時に、気持ちについての対処も考えて下さい。防災訓練に過度に反応する恐れのある子どもには、事前に個別に話し合うことが必要です。また、防災訓練のあとの気持ちについての対処について、落ち着く練習などを実際に行うとよいでしょう。(災害に立ち向かうための対処:防災訓練のあり方)

8,心と身体を回復するには、『安心・きずな・表現』が大切です。安心は、安全感がないと、生まれません。ライフラインの回復、住居の確保、余震がなくなること、それが一番大切です。でも、余震が続く中、できることも、たくさんあるんです。それをお話してあげてもいいでしょう。ただ、命の喪失を身近に経験した人は、「安心」というのは、なかなか受け容れられません。「安心」というより、「安寧」でしょうか。こんな悲しいことがあったけど、「おだやかな気持ちでいることができる時間を少しでももつことができる」といったことです。

      

,教職員のみなさん、自衛隊・消防・ボランティアのみなさん、ご自身の心のケアに留意してください(『援助者のケア』)。アルコールが増えすぎるのは、要注意です。という私も新潟に行って帰ってきたあと、アルコールが増えていますが。ほどほどにしましょう。

10,このサイトの理論的背景は、『ストレスマネジメント』『トラウマティック・ストレス』です。

 

冨永良喜(兵庫教育大学)・小澤康司(立正大学)・高橋哲(兵庫県スクールカウンセラー・スーパーヴァイザー)

                            

被災地でがんばっておられる教職員・対人援助職のみなさん、心のケアの実践や、疑問があれば、メールを下さい。もし、ネットで紹介してよければ、 「公開可」と記してください。                        hotanshin@hotamail.com   2004.11.10

_______________________________________

                                              目    次

     「台風23号被災地での活動」(2004.12.15)

     「新潟県中越地震の被災地の教職員のみなさんへのメッセージ

      阪神大震災から9年・子どもたちから教えてもらったこと」古川かよ(2004.11.23)

  「心理教育」/心理教育の授業/心理教育のメッセージ/災害遊びのかかわり方

  「ひとと人の絆」/絆のワーク

  「落ち着くためのリラクセーション技法」/イメージ呼吸法/漸進性弛緩法/肩と腰の動作法

  「安心・きずな・表現」

  台風23号被害による影響

   『震災は私の永遠のテーマです』 ― 阪神・淡路大震災直後の学校現場を振り返って ―

  「からだは語る・からだに語る−阪神大震災被災者への動作法支援」
_______________________________________

「台風23号被災地での活動1」 冨永良喜(2004.12.18)

豊岡で2カ所、養父で1カ所、保護者研修会を行いました。高橋哲さんが、「災害後の心のケア」をpowerpointを用いながら30−40分話し、その後、私が、リラクセーション(漸進性弛緩法・呼吸法)・がんばり方と気持ちの切りかえ・絆のワークを30−40分行い、質疑応答の時間をとりました。いずれも、夜の7時30分から9時までです。21日は洲本で予定しています。

私はある小学校に被災から約1ヶ月後に3日間続けて入りました。ほかにも、保護者研修を行ったところで、子どもたちのようすをお聞きしました。子どもたちは、一見、元気そうにみえますが、「はしゃいで落ち着かなかったり」、個別面接では、「台風の次の日から怖い夢をみていた・・」と語る子もいました。子どもの年齢に応じたわかりやすい言葉で、心理教育を行い、漸進性弛緩法や動作法をいっしょにしました。「あれやったよ。すぐ眠れたよ。ずっと怖い夢みてたけど、昨日は楽しい夢みたよ」と語ってくれた子もいました。クラスで、ストレスマネジメントの授業もやりました。集団は相当気を使いますが、それだけに、みんなで、いっしょにやる利点もあります。

台風23号被害は、マスメディアにもあまり取り上げられず、私たちも被害の大きさを近くにいながら、実感できずにいました。しかし、大変な被害です。思い出がいっぱいつまっているものを失った人もたくさんおられます。車、電気製品、ピアノ、アルバム、パソコンの貴重なデータ。そのことも相当こたえています。

ほかに中学校や高校にもでかけました。どの学校には、心のケアをよく理解された熱心な先生がいることに感動しました。本当に子どもたちをよく見て、かかわっています。

高校でも少人数でしたが、ストレスマネジメントによる心のケア研修会を生徒・教職員対象に行いました。使ったpowerpointをupします。

 

  被災地の高校生へのストレスマネジメント powerpoint

     被災地の高校生へのストレスケア通信 05.1.8up pdf

    被災地の小学生のためのストレスマネジメント pdf

  気分チェックリスト exell

     被災地の小学生のためのストレスマネジメント授業の板書事項

 

災害ストレスによる影響は、みえにくいかもしれません。「登校できない」とか、「激しく身体の痛みを訴える」というのであれば、誰しも、大変だと思います。しかし、学校には来ている、元気そうだ、ということであれば、気づきにくいわけです。これまで、何カ所かの学校を訪問して感じたことは、子どもたちの変化をしっかりみている教師がいるということです。「1学期からクラスづくりをしてきて2学期になり落ち着いてきたと思ったころに災害にあった」「災害から2週間ほどしてから、クラスが落ち着かなくなった」「保健室を訪れる子ともたちが増えてきた」「災害遊びをしている」

ストレスアンケートを実施するとともに、教師からの観察により、個別的なケアが必要な子どもには保護者の了解のもとに個別相談を実施しています。スクールカウンセラーとの個別相談について、「気持ちが落ち着いた」「むちゃ楽しかった」といったことを子どもから親に語っているようです。それと、教師研修、保護者研修をそれぞれ行ってきました。研修では、災害による心のケアについてのお話しと、ストレスマネジメントワークの実際です。年齢に応じて話し方は異なりますが、ワークの内容は同じです。

これまで経験したことのない心身の変化(眠れない、悪夢、高揚感など)についての仕組みを知り,それらの反応に対処することができるという自信をもつことで、災害に圧倒されていた自分から、それを乗りこえようとする自分に変わるようです。

心のケアというと、「お話しをお聴きする」という印象があります。もちろん、お話しはしっかり聴きます。しかし、同時に、災害によって引き起こる心身の変化を伝え(心理教育)、気持ちをコントロールする方法などの望ましい対処を提案します。ある教師の方が、「スクールカウンセラーが来てくれて、それまで『台風のことは話題にしてはいけない』という雰囲気だったのが、それがなくなったと言われていました。

なお、毎日新聞が、台風23号被害の子どもの心のケアに関する記事をよく書いてくれています。

http://search.mainichi-msn.co.jp/cgi-bin/client.cgi

キーワードに 「災害 子どもの心のケア」といれると記事が検索できます。

「台風23号被災地での活動 2」-洲本「心のケア講演会」に参加して  冨永良喜(2004.12.23)

 21日夜 洲本市教育委員会主催「心のケア講演会」に参加するため洲本を訪問しました。教育長によれば、10月20日当日は、山から滝のように水が流れ、2つの川が交わる場所は、濁流がぶつかり合って天に水柱が立っていたとのこと。床上浸水約2000戸。突然の増水で避難することもできなかったようです。2階にあがることすらできず、胸近くまで水に数時間浸かっていた方もおられたと話されていました。

 アンケートと教師の日常の観察から、120名の要配慮児童に対してスクールカウンセラーによる個別面接がはじまりました。

 1998年那須大水害で那須町教育委員会が教育長をはじめに子どもたちの心のケアに全力を挙げていたのを思い出します。豊岡も洲本も教育長を中心に一丸となった体制がとられています。

 講演会には180名ほどの参加者があり、心のケアへの高い関心が伺われました。高橋哲さんのスライドを使った講演は、これまでに豪雨災害で苦しんできた子どもとの出会いを織り交ぜながら話され、一段と迫力を増してきました。講演会をはじめてビデオカメラに収めました。私は後半、ワークを担当しました。講堂で行ったにしては、絆のワークでは参加者がペアになって肩もみをはじめるなど、なごやかな雰囲気に包まれました。多数参加の講演会のため質問はすくなかったですが、洲本で活動している臨床心理士の自己紹介と、兵庫県スクールアドバイザーの今塩屋登喜子先生の被災した児童の心理についての話は、参加者の心に訴えるものがあったのではと感じました。

_______________________________________

新潟県中越地震の被災地の教職員のみなさんへのメッセージ

       阪神大震災から9年・子どもたちから教えてもらったこと」  古川香世(2004.11.23)


1,中1を担任している時に、被災しました。クラスの友だちを1名亡くし、生活環境にも大きな
変化があり、心に受けた影響はかなり大きかったです。でも、みんなそれなりにプラス思考で前向きに生きてきています。27名の生徒と面接調査を機に再会しましたが、それぞれの生きる力に感動し、「生きていてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいになりました。

2,それぞれの話を聞いて思ったことは、被災体験といっても、被災状況に個人差があるのと同様に、その体験への受け止め方や感じ方がみんな違いました。当時の私は、みんなつらいだろう、みんな悲しいだろうと思いこんでいましたが、そうではありませんでした。逆に、自分が何とも感じないことに罪悪感を持って、自分は冷たい人間だと自分を責めている子もいるほどでした。色々な気持ちになる子がいるのであって、それを全部、「それでいいんだよ。」と受けとめてあげるべきだったと今になって強く思っています。新潟の子どもたちには、ぜひそのことを伝えてあげたいです。

3,2に関連して、例えば「友だちの死に涙が流れなかった」「悲惨な光景を”すげえ、すげえ”とわくわくしながら眺めていた」ことについて、自分はおかしいんじゃないかと、10年目が近づいた今でも心の奥で思い続けている子が何人かいました。今回の面接調査の後に、『感情の麻痺』などに関して簡単な心理教育的なことをしましたが、「それを聞いて安心した」 「うち、これやったんやわ」「何でもっと早く教えてくれんかったん」と言う声が多く聞かれました。もっと早く、例えば、中1で被災した生徒たちに、中2や中3の段階でこの話をしてあたかった。もっと早くきもちを楽にしてあげたかった。このことから、心理教育の重要性を強く感じました。生徒にこういったことを伝えるためにも、教員にも欠かせない知識であると感じています。

4,被災地を離れていった生徒に関しては、こんなことでクラスがバラバラになって・・・と悔しく寂しかった反面、安全なところで安心して生活できるので大きく心配はしていませんでした。

     しかし、今回、その子たちは、口をそろえて「行きたくなかった」と言います。転出先では、人々の暖かさ、優しさに支えられたけれど、被災によるトラウマを抱えたまま、新しい環境になじむ努力を強いられ、いつも神戸のみんなはどうしているんだろうと気になっていたと言います。そんなときに、私が郵送していた学級通信や被災地に残ったクラスのみんなからの寄せ書きが大きな支えになったようです。

  「みんなのことが分かってよかった」という声に、私は、『つながり』 の大切さを痛感しました。もし、新潟でも被災によって転出を余儀なくされた子がいましたら、何らかの方法で『つながり』を感じさせてあげてください。転出先で受けたケアは、逆にしんどかったと言う子もいます。本来のクラスの仲間や担任ができることの方がきっと大きいです。

  今思いつくことはこれくらいです。お役に立てればいいのですが。

 

阪神大震災を経験した教職員のみなさん、古川さんのように、新潟に送りたいメッセージをお寄せ下さい。冨永

______________________________________

 

「心理教育」

  心理教育の授業 テーマ「たいへんなことを乗りこえるために」 作:小澤康司・冨永良喜

  ねらい: 命にかかわる出来事に出会ったときのストレス反応を理解し、有効な対処があることを、子どもたちが学びます(発達年齢に応じて言葉遣いなどを変えます)。この授業案は、日常を少し取り戻したころ(少なくとも学校再開から1週間以上してから)、行うと良いでしょう。

  留 意: 級友を亡くしたクラスでは、お祈りすることや、追悼の集いを、時期をみて、企画すると良いでしょう。

ですから、「心理教育の授業」を、そのクラスで行うことは慎重にならなければなりません。命の喪失を身近に経験したクラスでは、一斉の授業で 「心理教育」を行うより、個別のかかわりの中で、「そうだよね、悲しいね。悲しくなったら、思いっきり泣いていいんだよ。それが自然だよ」とかかわるのもいいでしょう。

             

   対象:小学生〜中学生

    板書例

       出来事    → 受けとめ方(考え方)  → 心と身体の反応

       できごと        かんがえ方       こころとからだ

      (ストレッサー)     (認知)          (ストレス反応)

     かんがえていること

   

     A  おふろ      よかった!        ← ほっとする、元気がでる
                                    安心、リラックス


     B  じしん      たいへんだ!いやだ! ← こわい、しんぱい、不安

      じしんがくるかもしれない

      

「こんな大変な中でも、『ほっとすること、楽しいこと』ってどんなことですか?」

子どもたちから、発言を求める。

からだの絵を板書し、ほっとする出来事を書いていく。

 

「ほっとするときって、からだはどうなりますか?」

こわいなー、いやだなーって思う時は、どんな時ですか?」

子どもから「友だちからいやなこと言われた時」とか「よしん」とかの発言が予想される。

「こわいなーって思うときって、からだがどうなりますか?」
     子どもから、「身体が固くなる。緊張する。ドキドキする。・・・」といった発言がでれば、

「そうですね。こんな大変なことがあったら、心や身体が精一杯がんばって、それに立ちかおうとしているんです」

このように、『異常事態での正常な反応』であることを、年齢に応じたことばで伝える。こういったことを仲間で話し合うことは、「自分だけが、こんなになっているんではないのだ」ということを知る機会になる。

 「出来事には、楽しいこと、こわい悲しいことがあります。楽しいことがあったら、心は、安心な気持ちになります。こわい悲しいことがあったら、心は、不安、緊張、身体は、固く、痛くなります。そして、またじしんがおきるかもしれないとかんがえただけで、こころは、不安、緊張、身体は、固く、痛くなります。それは、私たちのこころとからだの仕組みがそうなっているからです。だから、こわいことがあったら、心と身体がそんなふうになるのは、とっても自然です。」


子どもたちに、「じしんのことで、不安な気持ちがあったり、夜眠れないお友達は手
を上げてください。恥ずかしがらないで手をあげてごらん」

(手を上げる生徒が多いときは、みんなが手を上げていることを確認させ、手をおろさせます。)みんなが、不安な気持ちをもっています。身体に力を入れてがんばっているのです。だけど、ずっと、緊張、心配が続くと、身体がもたないよね。だから、こんな大変なときこそ、ほっとする、元気がでてくる、そんな心がいっぱいになることをするといいんですよ。

じゃ、ともだちとケンカするっていうのは、心と身体は、こっち(A)とこっち(B)どっちかな?


反対に、友だちと仲よくしているとき、楽しくあそんでいるときは、どっちかな?
  
     

みんなは、どんなときに、安心したり、元気になれますか?(ともだちといるとき、おかあさんといるとき、遊んでいるとき、など)

そうだね、いろいろあるよね。ほっとする、元気がでてくることをいっぱいしましょう。
温泉とか、ゲームなどがでれば、温泉は、すぐに行けないよね。ゲームはね、ちょっと
けならいいかもしれないけど、ずっとしていたら、勉強やスポーツにがんばれなくなるね。

すぐに、どこでもできる方法を身につけているといいと思わない?

ここは安全だと思う時には、身体の力をぬくリラックス法を知っているといいよ。

緊張しすぎていると感じるときや、夜寝る時にリラックス法をすると、体の回復力がたかって、元気になれるよ。



  心理教育のメッセージ 教師や大人が送る子どもたちへのメッセージ 作成:冨永良喜

    命にかかわる出来事に遭遇すると、ひとは主に6つの心と身体の変化が生じることがあるといわれています。そのことを知り、有効な対処法を身につけておくことは、自分のストレス反応に対して、落ち着いて対処することにつながります。集団で、個別で、子どもの反応に出会ったとき、折々に、子どもたちに、静かに、落ち着いて、語りかけて、話し合ってください。どんな小さな子どもも、大切なことを大人が話している時は、しっかり、耳を傾けてくれます。一見、聞いてないように思えても。

  (赤字は、反応に該当する専門的な用語です。子どもたちには、伝える必要はありません。)

 

  ひとはつよいストレスを経験すると、こころと身体にいろんな変化がでます。

 

  これからお話しする「心と身体の6つの変化」は、とても自然な、だれでも起こる自然な変化なのです。

  時間がたつにつれ、少しずつ、その変化が小さくなっていきます。でも、ながく続くと、勉強に集中できなかったり、楽しく遊べなかったりします。それで、そんなときどうしたらいいか、お話しします。

 

  ひとつは、気持ちが、はしゃぐ、興奮する、たかぶる、緊張する、といった変化があります (過覚醒)。それは、力をいれて大変なことに立ち向かおうとしているのです。

  こんな時に、はしゃいだ気持ちになる自分は、なんて冷たいんだろうかって思うこともあります。

  でも、こんなことがあったら、気持ちがたかぶるものなんです。

  そんなとき、 気持ちをしずめること 落ち着くこと リラックスすること です。例えば、息をゆっくりはいてみると少し気持ちが落ち着くかもしれません。肩に一度、力をいれて、ふわーっと力をぬくと、気持ちが落ち着くかもしれません。人間は、自分で興奮や緊張を和らげる力をもっています。(リラックス法)

 

  2つめは、思い出したくないのに、急に思い出すといった変化です。夜、眠っていて、夢の中で思い出すこともあれば、起きているときに、ふと思いだして怖くなったり悲しくなったりすることがあります。また、子どもは、恐いことを、遊びで、繰り返し表すことがあります。(阪神淡路大震災では、避難所などで、断層ごっこ、地震ごっこなどを、子どもたちは遊びでやっていました。)(侵入)

  そんな時、 一人でいると怖いですが、誰かといると安心できます。 つらいことを思いだしたときは、安心できるひとに抱きしめてもらうといいでしょう。すると、ぬくもりから、「いまは、安心なんだ」っていうことが、わかるかもしれません。それから、人に話すこと もいいかもしれません。

     「こんな夢をみてこわかった!」って。しっかり、話を聞いてくれるひとに、話すと、気持ちが、楽になることがあります。 (受容・傾聴)

 

  3つめは、そのことについて、話したくない、よく思い出せない、自分の気持ちが感じられないといった変化です。気持ちがマヒしてしまって、悲しいのに涙もでないということがあります。これも、なんて自分は冷たいんだろうって思ってしまうかもしれません。でも、これも、当然な反応なのです。(マヒ・回避)

  そんな時は、 楽しいこと をしましょう。楽しいことも、テレビゲームとかではなく、身体を使った遊びがいいでしょう。好きな音楽を聞いたり、好きな本を読んだりもいいかもしれません。もともともっているあなたの趣味を楽しんだり、友だちと楽しいことをするのもいいでしょう。(潜在的な良い体験)

 

  4つめは、ひとりでトイレに行けない、ひとりでお風呂に入れない、ひとりで外に出られない、といっがあります。いままで、ひとりで、できていたのに。どうしてだろうって思うかもしれません。(退行)

  でも、ひとりでできなくてもこんなときは、あたりまえ、って思うことです。安心できる人がそばにいると「だいじょうぶだ」っていう気持ちになれます。あなたは、「あんしん・ほっとする気もち」を取りもどそうと工夫しているんですよ。大変なことがあったときは、おとなの人に甘えていいんですよ。

  そして、安心な気持ちがふくらんできたら、今度は、ひとりで、トイレにいくことをちょうせんしてごらん。きっと 「だいじょうぶだ!」っていう気持ちがふくらむよ。

  

  5つめは、おなかが痛くなったり、頭がいたくなったり、もともとの持病が悪くなったりすることがあります。 (身体反応)   

   

  そんな時は、保健室の先生に相談する、お医者さんにみてもらう、がまんしないで、相談したらいいんだよ。

 

  最後、6つめです。こんな出来事があったために、どんなにがんばっても仕方ないとか、よいことはなにもないといったように考えてしまったり、自分はちっとも悪くないのに、自分を責めてしまうこともあります。悪いように考えてしまうのです(中学生以上は、「否定的な考え、マイナス思考になってしまうのです」といってください)。(否定的認知:無力感、自責感、孤立無援感など)

  そんな時は、この大変なことから、いろんなことを学ぶこともできると考えてみてください。ひととひとのつながりが、とっても大切なことを学んでいるかもしれません。また、つらい体験を、未来のよい社会をつくる力にすることができるかもしれません。

  阪神淡路大震災では、「倒れない家を作るんだ」と建築士をめざしたり、命を救う仕事をしたいとか、それから、とても努力した人がたくさんいました。ひとは、悪い考え方をよい考え方に変えることができるんです。

  学校再開のニュースがNHKで流れていました。ある高校の先生が「ポジティブ思考で行こう!」と生徒たちに語りかけていました。そうなんです、このことが、とっても大切なひとつなんです。(肯定的・建設的考え)

 

 

   「災害遊び」へのかかわり方について

   

 「じしんごっこ」、「すいがいごっこ」など、災害遊びをすることがあります。危険な遊びでなければ、見守るか、いっしょに遊ぶか、遊びながら、「怖かったね」と気持ち言葉を投げかけてあげたらいいでしょう。

  わが子が幼稚園の時、「じしんだ!」といって、室内物干しをゆすって遊んでいました。その時、災害後の心のケアについての知識がなかったので、 「そんな不謹慎な遊びはやめなさい」と叱ってしまいました。子どもなりに、こわかった気持ちを表現していたのに。でも、そんなわが子もすくすく成長していますので、少々の不適切なかかわりも、全体がよければ、よしとしましょう。
    

  でも、災害遊びには、危険な遊びもあります。阪神淡路の時に、机を高く積み上げて、一気に落とすといったあぶない地震遊びもありました。そんな時は、とめましょう。そして、話し合いましょう。こんなに大変なことがあったときは、心が高ぶったり、そういった遊びをしたくなることがあるということを、落ち着いて伝えましょう。そして、心のキャッチボールをしましょう。症状と思われることは、回復への道のりなんです。

 

「ひとと人の絆」

  人のあたたかな思いやりが、なにより回復の力になります。生活支援のすべてが、絆による力です。

 

  1,絆のワーク

  ここでは、人の絆の力を確かめるためにも、『ほっとする実感』を体験するためにも、「絆のワーク」を紹介します。

 

  同性同士ふたり一組になります。椅子であれば、同じ方向を向いてすわります。後ろの人が、あたたかなメッセージを伝える人です。前の人が、受け取る人です。

  こんなに大変なことがあったときって、なにが大切だと思いますか?

  「おもいやり」です。ひととのつながりです。全国からいっぱいボランティアの人が応援にきてくれています。大変なことを乗り越えるためには、お互いの思いやりが大切です。

  それで、二人一組になってみましょう。男の子は、男の子同士。女の子は女の子同士でペアを作りましょう(ひとりになる子がいなか、事前に、考えておく。どうしても3人組ができるところは、3人一組にする。真ん中の子が援助し体験する子になり、二重課題になるので、集中しずらいが、ひとりぼっちになるよりもずっといいので。男性の教師は、男の子をモデルにすること。小学生でも、そういった配慮をしてください。)

 

  後ろの人が、応援する人です。前の人が体験するひとです。

 

  前の人は楽な姿勢をしてください。

  うしろの人は、前の人の肩に、しっかりとやさしく、手をおきましょう。もし、肩をもんであげたり、ふざけて肩を強く押したりする子がいれば、ダメですといわずに、肩をもんであげる。それもいい方法です。ニューヨークのテロのあと、消防士が求めた心のケアの一番目は、マッサージだったんですよ。だから、マッサージはとてもいいんです。でも、いまは、肩にしっかりやさしく手を置くだけでいいんです。(はしゃいだ気持ちがあれば、しっかりと落ち着いて手を置けないので、このとき、全体が、しーんと集中する感じがででくるように。)もし、ざわついて落ち着かないようだったら、『はい、一度手を離してください。どうだったかな?こんな時、大切なことは?

  ・・そう、落ち着くことでしょ。落ち着いて、しっかりやさしく応援するんですよ』

 

  手を置いてもらったら、肩があたたかい感じ、息をはくたび、肩のあたたかさが、身体全体に広がる感じがするかもしれません。いろんな人が応援してくれているなー。そうすると、少しがんばってみる気持ちがふくらんできました。

 

  それで、前の人は、背中を伸ばして腰を立ててまっすぐな姿勢にします。そして、んの少しだけ、肩に力をいれます。後ろの人は、前のひとのがんばりが伝わりますか。

  はい、肩の力をぬいて。

 

  今度は、もっと高くあげてみます。後ろの人は、『がんばっているね。すごい』って言ってあげてください。肘、背中に思わず力がはいっていませんか。顔はスマイルですよ。はい、ゆっくり肩の力をぬいて。背中は、まだまっすぐだよ。がんばった余韻が肩に残っていて、思わずまだ力がはいっているかもしれません。

 

  そして、後ろの人は、ゆっくりゆっくり、手を離していきます。手を離してもらっても、いつまでも、応援してもらっている感じがするかもしれません。

 

  はい、楽な姿勢。『がんばったね』て後ろの人は言ってあげてください。

  はい、交代。

 

 

 

「落ち着くためのリラクセーション技法」                 作成:冨永良喜

      リラックスには、2つあります。「お休みのリラックス」と「余分な力をぬくリラックス(適切緊張感)」です。なにかに、立ち向かわなければならないときは、力を抜きすぎては、がんばれません。立ち向かわなければならないときは、余分な力を抜いて、落ち着くことが大切です。そして、 「適切な緊張感」や「適切な身構え」で、物事に対処していきます。

  「お休みのリラックス」というのは、安全な場所で、「充分、心と身体を休めていいですよ」、というリラックスです。眠りがその究極です。

  「余分な力をぬくリラックス」と「お休みのリラックス」の手続きの違いは、簡単です。余分な力をぬいて、適切な緊張感を保ちたいときは、身体の軸を立てます。椅子座位であれば、腰を立てて、背筋を伸ばします。それだけで、適切な緊張感が生まれます。

  「お休みのリラックス」は、横になるか、椅子座位であれば、背もたれにもたれかかるといった姿勢です。

  イメージ呼吸法は、「お休みのリラックス」にも「適切緊張感」にも両方使えます。それは、身体の軸を、立てるか、横になる・背もたれにもたれる といったようにすればいいのです。

  漸進性弛緩法は、「お休みのリラックス」です。

  肩や腰の動作法は、適切緊張感のため、落ち着くためのリラックス法です。

  「お休みのリラックス」をして、次に、なにかしなければならないときは、「すっきり動作」をしましょう。眠りたいときは、そのまま眠りについたらいいでしょう。

 

  1、イメージ呼吸法

 

  イメージ呼吸法の3つのコツ。一つは、吸うが緊張、吐くがリラックスです。リラックスしたいときは、吐く息を少し長めにします。二つめは、腹式呼吸です。息を吐くとお腹がしぼんで、息を吸うとお腹がふくらみます。三つめは、イメージやメッセージを使います。吐く息とともに、イライラや身体の疲れが身体の外にでていく感じがでてくるといいですよ。

 

  自分のペースで、ゆっくり息を吐いてみましょう。息を吐ききったら、大きく、自然に、息を吸い込みます。少し止めて、ゆっくり細く長く息を吐いていきましょう。吐く息とともに、身体の力が抜けていく感じやイライラがからだの外にでていく感じがするといいですね。

 

   留 意:これまでがんばってきて、いろんな感情をおさえてきた人は、リラックスすると返って、いろいろな気持ちがわき出てくることがあります。それは、むしろ、心が求めている自然な営みなんです。「無理を続けて、がんばり続けることは、心と身体によくないよ。たまには、息をぬいて、ひとやすみだよ」、って身体が教えてくれているんだよと思ってみてはどうでしょう。

    でも、いきなり、つらいこと悲しいことがわき上がっても、とまどいますよね。

    それで、はじめは、目をあけて、背筋をのばして、口をすぼめて、お腹をおおきくふくらませ、

    ゆっくりながく、ふーっと息を吐いてみます。・・・・・・・・一息だけでいいんです。

    「どうかな、少し、落ち着く感じしたかな?」と問いかけて。「ぜんぜん!」「効かない!」とか、子どもたちが、わいわい言えるといいかもしれません。そんな時は、「そうだよね。一回やっただけじゃ、身に付かないよね。オリンピック選手や大リーガーの選手は、何回もやって、気持ちのコントロールの術を身につけているんだから」と。

   一方的に、イメージ呼吸法の教示をするより、ちょっとやっては、気持ちを分かち合う、そして少しずつ、落ち着くこと、リラックスすることに、なじんでいけるようにすることがいいかもしれません。

 

  2、動作によるリラクセーション (簡易漸進性弛緩法)

    「みんな身体を使って、すごくがんばったあと、どんなことしている?」

   ストレッチや背伸びを子どもたちがいったら、それをいっしょにやってみることから、はじめると良いでしょう。もし、なにも子どもたちからでなかったら、「ほら、背伸びとかしない?」といってやってみます。

   背伸びも、まっすぐに伸ばして、それで、ゆっくり、右に、・・・左に、身体を倒して、すると、あーこっちの方が痛いな、とか感じるかもしれませんね。こんな大変な中、身体もがんばってるんだ。 「おつかれさま」って、自分の身体をねぎらってあげてくださいよ。っといいながら、はい、足も伸ばしてみましょう。

   はい、力をぬいて。ここで、10秒ほど、力をぬいた感じを味わってみましょう。

 

   背伸びやストレッチもいいんだけど、もっと気持ちが落ち着く方法、リラックスする方法を知っています。

  力をぬくためには、一度、力をいれてみます。そして、ちからを抜いてしばらくおいておきます。そうすると、ほんとうに力がぬけます。10秒ぐらい力をいれて、15秒ぐらい力をぬいて、ただおいておきます。

 

  いまからからだのいろんな所に力をいれて、力をぬいてみましょう。

   1 親指を握りこんで、両手をにぎります(ぐーにして握りしめる)

    (10秒を数える)・・・・はい力をぬいて。( 15 秒を数える)

   2 同様に、両手をにぎり、さらに、肘をまげ、腕に力をいれます。

     ・・・・・・・はい力をぬいておいておきます。

 

   3 背を少し伸ばします。今度は、肩に力をいれます(肩胛骨がみんなに見えるように、背を向けて示す)後ろに、両腕を開いていきます。はい、ここで10秒。・・・はい力をぬいて。肩、両腕、両手があたたかい感じがしてくれば、それがリラックスです。

 

    4 つぎは、肩です。肩をぐっとあげましょう。・・・・はい力をぬいて。

 

    

    5 つぎは、首です。背中をまっすぐにして。左の方を向いてみましょう。

     そこで、10秒。・・・はい戻して。・・右方向。前に倒す。

   6 つぎは、顔です。鼻に顔の全部の力を集めるつもりで。・・はい力をぬいて。

   7 つぎは、背中とお腹です。片手をお腹にあてて、手をお腹でぐっと押し返し

     ます。・・・・はい抜いて。

 

    8 つぎは、足です。足のつま先をたて、足の表側、上側に力をいれます。

あしがつらない程度で、ちからをいれてください。
(手を見本に示して内側に曲げる)・・・・はい弛めて。

     今度は、つま先をのばし、足の裏側、下側に力をいれます。・・はい抜いて。

 

   9 これも、めんどうだというひとは、一度に体全体に力をいれます。

     背中を立てて、腕を曲げて、胸をはって、腕を開いて、顔に力を入れて、

     足首は曲げて全身に力を入れましょう( 10秒)

     ・・・・はい、力をぬいて( 15秒)。

 

  留意:背を丸め、うつむき姿勢にすると、フラッシュバックが起こる可能性がある

     ので、からだを立てて、胸を張る動作で行ってください。

 

   はい、ここからが大切です。全部、力をぬいたと思っても、あー、肩にまだはい

   っている。足に入っている。そういうことに気づくかもしれません。

 

   これをやると、ぐっすりねむれるかもしれません。「ぐっすりねむっていても、

   起きたいときは、パッと起きることができる」って自分につぶやいたら、そう

   できることがあるんだよ。(自己暗示の力は大きいのです)

 

  「すっきり動作」

   ただ、つぎに、なにかしないといけないときは、「すっきり動作」というのを

   します。リラックスした気持ちから、さあ、やるぞっていった気持ちをはっき

   りさせるためです。

   「両手をグーパーグーパーします。次に、肘をまげて伸ばして、脚も伸ばせたら

    伸ばしましょう。両肘を前に突き出すか、高く上げて、はっきりと目を開けま

    しょう」

 

  3、肩や腰の動作法

   @腰を弛めて立てる

    椅子に座った姿勢で。(畳にあぐら姿勢で座ってやってもよい) まず、背中をまっすぐに立てて、腰をおこして、腰を伸ばしたまま、まえに、上体をおっていきます。手をぶらんと、首、背中、力はいっていませんか。力をぬきます。痛すぎたら、少し戻して下さい。無理しないで。自分のペースで。ゆっくり、腰を伸ばしていきます。そこで、しばらく(10秒か15ぐらいですが、時間は問題ではなく、腰が伸びる感じ、他のからだの部分に思わず力が入っていることに気づくことが大切です)、からだの弛む感じを味わいます。

    そうしたら、今度は、そのまま、右足の方に、からだを倒してください。左の腰が伸びる感じがするといいでしょう。ゆっくりと自分のペースで。今度は、左の方にからだを倒してみて下さい。じっくりと。こんなことがあったから身体がかちんこちんになっているかもしれません。「よくがんばったね」と自分の身体をねぎらい、いたわってあげて下さい。はい、また真ん中、・・・・そして、ゆっくりとからだを立てていきます。頭から、お尻までまっすぐに。

    腰がすっと伸びた。腰が楽になった感じがすれば、いいですね。

 

   A肩をあげて弛める

    椅子に座って、背を立てた姿勢で、肩をあげてみましょう。肩を上げるときに、肩がすぼんで内側に力がはいってしまうと気持ちまできゅうくつになり

ますので、少し肩を開くように、あげてみましょう。

 そして、ゆっくり、力を抜いていきます。その時、落ち着いた感じが、肩に広がればいいですね。2〜3回、肩をすっとあげて、ゆっくり力を抜いていきます。力を抜いていくときに、気持ちを向けてみましょう。

    肩はストレスを引き受ける部位であり、かつストレスをコントロールしやすい部位です。気持ちを表す身体言葉には、「腹が立つ」「はらわたが煮えくりかえる」「胸騒ぎがする」「鳥肌が立つ」「頭を冷やす」「肩身が狭い」といったようにさまざまあります。例えば、「腹を立てる動作」をしてみても、怒りの感情は、湧いてきません。ところが、肩をすぼめる動作をすると「肩身が狭い」感じがしてきます。「肩でかぜきる」も、動作によって、威張った感じを味わうことができます。「肩の荷をおろす」という言葉があるように、肩の力をゆっくりぬく動作を味わうことで、落ち着いた気持ちになれることがあります。

    つぎに、片方ずつ、肩をあげて、ゆっくり、後ろに、回しながら、弛めて行きましょう。後ろに動かしたときに、少し肩が痛い感じがでてくれば、そこで、とめて、首、反対の肩、背と他の身体の部位に気持ちを置いて、余分な力を抜いていきます。そして、痛みが少し和らいでいったら、ゆっくり、回して行きます。2〜3回、ゆっくり回して、スムースに楽に、動かせるといいですね。

    はい、背もたれに、もたれて、休憩の姿勢です。

 

「安心・きずな・表現」

  つらい・こわい気持ちを、身体に閉じこめ続けるほど、よくない対処はないと言われています。ですから、心に閉まっている気持ちを、表現することは、回復へのとても大きな力になります。 「泣かないでがんばるのよ」と声をかける人がいれば、「心のケアについての知識をもっていない人なんだ」と思ったらいいでしょう。そういう人は、あなたのことを思っていってくれているので、よけい、対応に困るものです。

  涙を思いきり流すことは、心を納めていく最もいい方法の一つです。もちろん、思いきり笑うことも大切です。「涙と笑いは、ストレスを解き放つ」と言われています。

  ただし、無理に、表現させることは、かえって逆効果になります。自分のペースで、安心できる人のそばで、安心して、こわかったこと悲しかったことを、表現することが大切です。

   表現には、たくさんあります。語る。泣く。怒る。笑う。書く。描く。作る。歌う。奏でる。また、「こころと身体のアンケート」も、表現です。心と身体に起こっていることを、尋ねるのですから、その前後に、「心理教育」が必要です。「こんな大変なことがあったら、心と身体にいろいろな変化が起きることがあります。それは、とっても自然なことです。例えば、「興奮して、はしゃいだ気分になっている」、とか、「夜、怖い夢をみる」、とか、「食欲がない」といったように、心と身体が、いつもとちがう感じになっているかもしれません。それは、大変なことを乗りこえようと心と身体ががんばっているです。それで、自分の心と身体が、どんな感じなのかを、点検してみましょう。もちろん、いまは、そんなことやりたくないなーと思う人は、やらなくていいですよ。また、途中で、やりたくなくなったら、やめてもいいんですよ」と。

  そして、いろいろな反応に対してどのように対処したらいいかを記したプリントを配って、さらに、そういった反応に、人は対処できるんだ!というメッセージを送ります。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  2004 年 11 月 15日 朝日新聞朝刊 「がっこう2004」より

  片桐治先生は11日、6年生の国語の時間に「地震の時のことを書いてみよう」と語りかけた。

  原稿用紙を好きなだけ持っていかせた。

  阪神大震災を経験して約10年たった今も、心のケアを必要とする小中学生が1337人いる。

  片桐先生は、山古志小の授業再開前に、兵庫県の「震災・学校支援チーム」からそう聞いた。

  「今の気持ちを書くことは心のケアのために大切」という話を、先生は心に留めた。「たくさん

  書かせようとしない方が、子どもは楽な気持ちで取り組める」。助言は教室ですぐにいかせると

  思った。

   落ち着いて、すらすら書き進める子もいた。作文が得意なはずなのに、なかなか書けない子

  もいた。地震の時のことを思い出すのを怖がっている様子が見て取れた。

  「笑顔を見せているけれど、怖い思いをしたんだなと、涙が出てきてしまいました。これ以上書

  かせない方がいいと思い、思わず原稿用紙を取り上げたのですが、『最後まで書きたい』とい

  うので・・・・・・」・・・・(略)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   阪神大震災の時も、地震の時のことを、作文や絵に、書(描)かせた方がいいのかという議論が、学校教育の中で、大きなテーマでした。描くこと・書くことが、心のケアにつながるのなら、書かせたい・描かせたいと多くの先生方が思われました。しかし、絵や作文をかかせて、あまりの悲しさに、それを受け止められずに、泣き崩れてしまったということも報告されています。

   おりしも、当時、ディブリーフィングという方法が、とてもいいと海外から紹介され、小さなグループになって、「その時のことを話しましょう」といった試みがなされました。感情をはき出すこと。それが心のケアになるというメッセージです。ディブリーフィングについては、災害援助に入った隊員への心のケアとしてはまだしも、否定的な見解が、わが国ばかりか、世界的にも、一般的になっています。

   

   もちろん、つらい気持ちをしまい込む対処はよくないのですが、こわい気持ちをがんばって、表現した時、その気持ちをしっかり受け取ってくれる人が居ることが大切なのです。

   恐怖や悲しみをしっかり認めてくれる人です。ひとと人の絆の中で、安心して気持ちを表現できることです。『最後まで書きたい』と言える関係性が、片桐先生との間に、培われていたこと。そのことがとても大切なのだと思います。

   そして、「こんな大変なことがあったんだから、怖い気持ちが心の中でいっぱいになることはとっても自然なことなんだよ。その気持ちは、いろんなよい力のエネルギーにもなるんだよ」と、伝えてあげてみてはどうでしょう。それが、「心理教育」です。

   それと、つらい経験をお聴きすると涙が流れます。私も、犯罪被害で家族を亡くされた方とのカウンセリングで、涙が流れることは、よくあります。ただ、その時に、気をつけていることは、 「泣き崩れない」ということです。凛と背を立てて、しっかりとお聴きする。そういった気持ちが大切だと思います。子どもは、とくに、おとなが悲しまないように、一生懸命、よい子でいようとします。おとなが泣き崩れてしまったら、「いけないことを言ってしまった」と思ってしまうかもしれません。「涙がでることはとっても自然なことなんだよ。元気になるためにも必要なんだよ」と言ってあげたら、子どもも安心するかもしれません。

   「地震の時のこと」といった直接的なテーマを、子どもに、提案するといったことは、被災の状況によっては、つらすぎることがあります。それで、「こんな大変な中でも、よかったと思えることを書いてみましょう」とか、「水について」とか「食べること」「遊ぶこと」、発達によっては、「命について」とか「思いやり」といったテーマもいいかもしれません。直接的なテーマではなく、生きることにとって大切なことをテーマにすると、子どもが、自分で、書きたいテーマを選ぶことができるかもしれません。自分のペースで、安心して表現できることが大切です。

   もちろん、「書きたくない、描いていても途中でやめるというのもOKです」と、しっかり言ってはじめることも必要です。

   阪神大震災のとき、中学生に、地震の作文を書かせたことが、どうだったかの、9年後に調査した先生がいます。ある生徒(もう22才ですが)が言ったそうです。

   「(作文を書かせたことが)いいか、悪いかは、それを、これからの自分たちのために、どう使うかで決まる」と。

 

 「心とからだのアンケート」で気になること・・・調査公害

  阪神大震災のとき、何度も、同じようなアンケートの依頼が、いろいろな研究者(?)からあったそうです。アンケート項目には、「あの時のことをふいに思い出して苦しくなる」といった項目があります。「あの時」のことを思い出させて、つらい気持ちにさせることがあります。

  だからこそ、「そういった反応は、当然なことであり、対処する方法があるんだよ」と、しっかり、心理教育をする必要があるのです。また、だれが見るのか、どのように活用するのかも、しっかり、伝えなければなりません。そして、アンケート結果を個別のケアに、必ず、つなげていかなければなりません。残念なことに、阪神大震災では、あまりにも多くの研究者が、子ども個々人に直接、結果が還元されない調査を実施したようです。この度の災害では、

  そういったことがないように、留意したいものです。

 

 

台風23号被害による影響

    10月20日、兵庫県では、台風23号による集中豪雨で、被害が相次ぎました。
  兵庫県は、北は、豊岡市・養父市・出石町・城之崎町などが円山川の氾濫で、 また、
西脇、滝野、小野が加古川の氾濫で、洲本が洲本川の氾濫で、多くの被害をだしました。


  兵庫県だけで、死者25名、重傷23名、軽傷66名、全壊72棟、半壊610棟、一部損
壊2244棟、床上浸水9862棟、床下浸水11359棟でした(兵庫県発表)。


  11月14日に、兵庫県臨床心理士会会長の杉村省吾先生と高橋哲先生の3人で、豊
岡・養父・出石にでかけました。円山川の決壊は、伊勢湾台風以来とのこと。水が1階の天井まで達し、かろうじて2階に避難し、救出された方が多数おられたといいます。

  災害からもうすぐ一ヶ月になろうとしています。災害直後の興奮期をすぎ、身体的な訴えなどがあらわれたり、災害遊びをはじめるこ
ろかもしれません。また、受け入れがたい出来事を自分の心に収めるために、自分なりの物語を作ることもよくあります。少しほっとして、安心できるようになった証でもありま

  す。落ち着いて、大人が、かかわることで、恐怖を過去のものに少しずつできます。

  災害遊びや自分なりの物語を作っている子どもには、その遊びにかかわりながら、子
どもたちが考えていること、感じていることに、耳を傾けてみます。「えー、そんなふうに感じていたんだ!」ということをよく発見します。そばで、しっかり聴いてくれる人、かかわってくれる人がいるという現実が、安心感をもたらします。しっかり聴いてあげたら、 「大変な雨がふって、○○川の堤防が壊れて、水があふれてしまったんだけど、しっかりした堤防を大人の人たちが、作ってくれたから、もう大丈夫だよ」と言ってあげるといいでしょう。

  身体的な訴えには、身体を介抱してあげながら、お医者さんにみてもらい対応されると
いいでしょう。身体を訴えることで、気持ちを表現していると考えていいでしょう。自分で身体を楽にする動作法やリラックス法もいいかもしれません。

  豊岡・洲本は、高橋先生が中心となって、心のケアについての教師研修を行ってきまし
た。子どもたちを見守ることができるのは、教師と保護者です。みんなで力を合わせて、子どもたちの心をサポートしていきましょう。

                                                                                                                                              2004.11.16 冨永記す

被災地での「心の授業」案の検討

  今日の臨床心理学特論の授業で、「災害後の子どもの心のケア」を行いました。兵庫教育大学は、全国から教員の方が、大学院に長期研修に来ています。阪神大震災を経験した人もいます。

  授業は、このHPを紹介し、災害や事件後の心のケアのあり方について、心理教育やアンケート実施の要領などを話しました。後半は、小学生向けに作った授業案「こんな時どうする?」を私が担任、受講生が子ども役になって試みてみました。

  授業のストーリーは、表情絵を使ったストレスマネジメントです。はじめに、「笑顔の表情絵」をみてもらい、「どんな時に、こんな顔になるかな?」「そのとき身体はどうかな?」、次に、「怒りの表情」を見てもらい、同じ設問ストレス対処の質問「ずっと怒っていたら身体がもたないよね。そんなとき、どんなことをしている?」と。「温泉に行く、楽しいことをする、人にお話すること」、最後に、「怖い・嫌だという表情」を見てもらい、「怖い」気持ちが、「ずっと続いた

  ら、身体がもたないよね」といい、安心のメッセージを送る絆のワークをやりました。

 

  その感想を掲載します。

 

  被災下の学校で今回の授業を行う場合、やはりタイミングがむずかしいと思いました。子どもたちが「今 それを思い出すのはつらい」とか「考えたくない」ということを素直に言える雰囲気ならいいのですが、そういう雰囲気を作る自信がなければ、多分できないように思います。

  阪神大震災の時、「何かしなければ」という思いで、子どもたちに働きかけたり授業をしたりしましたが、今考えると良かったどうかはわかりません。教師には「何かしなければ」の「何か」をじっくり考えられる「余裕をもっていいんだよ」というメッセージを伝えることも大事なような気もしました。「笑顔と怒り」の表情絵は、自然でしたが、「怖い嫌だという表情絵」は、しない方がいいと思いました。ただ、「元気がでてくるワーク」は、子どもたちや大人にも必要だと思い

  ました。絆のワークや呼吸法、それに「自分は落ち着いています」といったメッセージを送るワークなどです。それだけで、いいと思いました。        道木尚(芦屋小学校教諭)

 

    

  最後のワークに関しては,私個人としては受け入れやすかったのですが,それはやはり災害を経験していないからだという事を,周りの方たちと話をしていて感じました.新潟の地震についても,自分の住んでいたところともやや離れていたり,当日ちょうど山形におり,震度3〜4程度の地震は経験したのだが,特に被害を受けるということもなく,新潟での出来事は、やはりどこか別世界という印象もあるのかと思いました.

  HP の情報に関しては,父が兵教の HP の更新を楽しみにしており,支援の話も父から教えてもらった.心のケアについて,外部への情報提供があるということは被災している方やその周囲の方にとって,対処のガイドとなる,すごく有益なものになると思いました.       小関俊祐(新潟大学卒業)

 

  「こんな大変なことがあって、心も体も疲れているよね。そんな時、心や身体が元気になる方法があります」といって、背伸び、動作によるリラクセーション、イメージ呼吸法、絆のワークなど、少しずつするのがいいかもしれません。       2004.11.19 冨永記す

 

  災害後のアンケートは、ストレス反応が項目として、並んでおり、それを読むと気分が重くなるといった感想があります。自分のストレス反応を知るだけでなく、望ましい対処(対応)があることを、しっかり伝えることが大切だと思います。


______________________________________________

 

『震災は私の永遠のテーマです』 ― 阪神・淡路大震災直後の学校現場を振り返って ―
                                               2002.8.9

                      兵庫教育大学大学院(神戸市立中学校)古川香世

                                          

《1》はじめに
 あれから8年以上が過ぎた今、「震災は私の永遠のテーマ」との思いはますます強くなっ
てくように思います。
 あの時担任していた37人の生徒たちはどうしているのかな、みんな元気かな、震災の後
遺症は大丈夫かな。1月17日が来るたびに、自分自身が今でも動揺し、涙もろく不安定になりながらも、当時の教え子たちの顔を思い浮かべずにはいられません。
 1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、震度7を越えたと言われる激震地にあ
った当時の私の勤務校、神戸市立T中学校にも甚大な被害をもたらしました。命を奪われた生徒が1名、それは私が担任する1年生のK君でした。家族を亡くした生徒も多数にのぼり、住むところを失ったり、何時間も倒壊家屋に閉じ込められていたり、負傷したり、悲惨な光景を目の当たりにしたり、とにかく想像を絶する衝撃が、生徒たちにも容赦なく襲いかかっていたのです。
 学校は、校舎の損傷が激しいにも関わらず、初日から800人を超える避難者であふれる
こととなり、教師は避難所の業務と学校の正常化に向けての雑務に追われました。
 そんな中では、非常事態に置かれた生徒一人ひとりを心配しながらも、「心のケア」にまで
は手が回らなかったというのが実情です。また、「心のケア」という言葉そのものが現在ほど身近なものではなく、生徒の精神面への対処は手探り以外に方法がなかったように記憶しています。


《2》当時を振り返って
  1月17日(火)――兵庫県南部地震発生。
  大切な大切なK君の命が奪われました。

  1月23日(月)――ひび割れたグランドに初めて生徒を集めました。全校集会でK君の死が報告され黙祷をしました。その午後、三田市で営まれたK君の葬儀には諸事情によりクラスから5名しか連れていくことができませんでした。学校を出発する車を、「私も行きたい」「連れていって」と泣きながら追いかけて来る姿を見ながら、すべての生徒にK君の死を受け止める喪の作業が必要だと強く感じました。


  1月25日(水)――2回目の学校集合。まだ校舎には入れません。グランドで所在地や
制服・学用品に関して事務的に聞き取りをするだけで終わりです。この時点で出席率はクラスの3分の2。顔を見れた生徒については取り敢えず安心できましたが、すぐに各地に疎開してしまった生徒のことがとても気掛かりでした。

  1月26日(木)――ふと「こんな時だからこそ」という気になって地震後初の学級通信を発行しました。家庭訪問を兼ねて配って回り、遠隔地の疎開先にも郵送し必ずクラス全員に届くようにし、もちろんK君の自宅前にもお供えしました。生徒のためではありましたが、それ以上に私自身が教師である自分を、あの混乱のなかでなんとか保つためでもあったような気がします。

  2月3日(金)――初めての通常の形の職員会議が開かれ、そのなかで対生徒への共通理解事項が出されました。それは以下の3点で、@現在の状況(地域・神戸市)と自分の立場を理解させる、A他者の立場を理解させる、B自分がなすべきこと、自分のできることの自覚と実践、ということで、一人ひとりの生徒への「心のケア」については言及していません。

生徒への「心のケア」は、各教師がそれぞれ独自に行い、学校としての取り組みには至っていませんでした。

  2月8日(水)――授業再開の日。避難者の方々のご協力で空けていただいた教室へクラスごとに入りました。HRの時間は震災体験を作文に書きました。被災後3週間。続く余震への恐怖と心に負ったであろう深い傷の癒される間もないこの時期に作文を書かせることに対しては、教師側にも大きな迷いがあり、賛否両論でした。今思い出してみても、書かせたことがよかったのかどうか、私には答えが出ません。


  これ以降、1年生は月・水・金の隔日、午後2時間のみの授業が続きましたが、避難所の
業務、学校立て直しの雑務に手をとられ、生徒一人ひとりとゆっくり話をする余裕はありませんでした。読ませてもらった作文の内容を気にしながら、ちょっとした暇を見つけては学級通信を書き、とにかくK君も含めた37名クラス全員に届けること。これにすべてを託していたように思い出します。

  3月25日(土)――終業式。クラスの生徒主催というかたちで「K君を天国へ送る会」を開きました。自分たちの手でK君を天国へ送る儀式をすることで、K君の死を現実として受け止め、心を整理してほしかったのです。全員がなんらかの形で主催に関わるようにし、生徒たちは精一杯頑張りました。K君のお母さんにも参加していただくことができました。

《3》手探りの心のケア
  当時を振り返ってみれば、あれでよかったのかどうか迷いはするものの、生徒の心に触れ
られたかなあと思えるものは3つありました。その3つについて、今もう一度考えてみたいと思います。

  (1)震災体験の作文について
  「書くことによって、また恐怖が再現され心の傷が深まるのではないか」「こんな時だからこそ、
現実を認識し、心の中を整理させることが必要ではないか」と、教師側にも迷いが残るなか、震災の体験作文を書かせました。「書きたくない人は書かなくていいよ」「書きたくないことは書かなくていいよ」という言葉かけをしましたが、出席していた生徒全員が黙々と作文を書き上げました。
  作文からは、それまでの聞き取りやアンケートではつかみきれなかった生徒の被災状況、一
人ひとりの具体的な様子がよく分かり、また、学校では表面上明るく振る舞っている生徒の裏に隠されていた、生徒の本音や精神状態を少し理解できた様に思います。しかし、これらは教師

側にとっての成果であり、生徒にとって作文を書いたことが、プラスになったのかマイナスだったのかは残念ながら判断できずにいます。
  この作文については、生徒理解の貴重な資料としたのみで、返却するタイミングのないまま、
今も私の手元に大切に保管しています。

  (2)学級通信について
   経験のない大混乱のなかで生徒になんとか心のメッセージを送りたい。遠隔地に疎開し、一
度も顔を見ていない生徒と、なんとかコミュニケーションをとりたい。そんな私の願いを叶えてくれる唯一の手段が学級通信でした。
  発行した25枚全ての題字に、K君の手書きの文字とカットを採用し、内容も、震災前までの形
をくずさず、生徒の書いたものや生徒の言葉、生徒の頑張りを記事の中心としました。
  これは、疎開生徒に限らず、多くの生徒・保護者からとても喜ばれました。「学級通信が届くと
ホッとする」「なんか安心した」という声が多かったように覚えています。
 同時に、学級通信を発行することは、異常な事態のなかで、私自身が教師として心の整理を
するためだったことを、今になって感じています。


  (3)「K君を天国へ送る会」について
  震災の混乱のなか三田市で営まれたK君の葬儀には、諸事情によりクラスの5名のみしか参列
できず、多くの生徒が泣きながら我慢して神戸に残ってくれました。また、授業再開の日に書かれた生徒の作文のなかには、「できればもう一度K君と話がしたい」「K君見とってな、がんばるから」「K君はずっと1年○組の仲間です」「お葬式でK君に頑張るって約束したからボランティアをはじめました」など、K君に関する記述が多く見られました。そこで、なんらかの形で、K君に対する喪の作業が必要であると強く感じ、会の開催を決めました。


 「K君を天国へ送る会」は、自分たちに頑張るエネルギーを与えてくれるK君に対して、お別れす
るのではなく、安心して天国へ行ってもらおうというもので、企画から会場設営、進行まですべて生徒の手で行いました。
 K君への手紙、クラス合唱、献花など全員が参加するかたちをとりました。一人ひとりがK君への
思いを語り、そしてみんなで歌い、みんなで泣くことができた。このことの意味はとても大きかったと思います。

《4》おわりに
  考えてもみなかった大混乱のなかで、生徒の心をケアしていくということは、やはりすべてが手
探りだったことを、今、あらためて実感しています。特に作文を書かせたことについては今でも迷いがあり、手元に残る作文についても、どうしたらいいものか分からずに持ったままです。そんな私が現在強く感じていることはふたつです。まず、教師一人ひとりに「心のケア」に関する知識と技術が必要であるということ。そして、震災に限らず、危機に対して、学校として組織的に「心のケア」をどう行うのかというマニュアルの作成と実際の訓練が必要であるということです。

  震災から8年以上が過ぎた今、決してこの体験を風化させることなく、少なくとも教師であるかぎり生きた教訓として持ちつづけたいと心から思っています。
  疎開したまま戻って来れなかった何人かの生徒たち、K君の弔辞を詠んでくれた親友のY君、
家を再建して「先生、親子ローンやねんで」と笑っていたA君、ボランティアに燃えた生徒たち、みんな元気ですか。どうしていますか。

  そして、天国のK君、今年の1月17日にお参りした時、「先生は、大学院に行くことになったよ」と報告したのを覚えてくれていますか。震災をきっかけに、また、あれからいろいろな生徒に出会うなかで、自分自身にもっとみんなの心を助ける力が欲しいと思うようになったのです。「心のケア」ということを勉強したくなったのです。臨床心理士を目指す大学院の勉強はとても難しいけれど頑張っています。

 K君、天国から、2年後の春の先生を楽しみに見ててください。  『震災は私の永遠のテーマです』

            兵庫県臨床心理士会発行「心の傷と癒し」No.9(『被災地だより』通巻20巻)より

_________________________________________________________

「からだは語る・からだに語る」 被災者への動作法支援の実際 冨永良喜(兵庫教育大学) 

 私たちは4カ所の避難所(西宮A公民館、神戸市灘区B養護学校、神戸市須磨区C中学校、神戸市東灘区D高校)と2カ所の医療機関(西宮H内科クリニック、神戸市中央区O仮設住宅Kクリニック医療ボランティア健康相談)で「リラックス動作法」の名称で被災者への心身のケアを実践してきた。避難所では『肩こり、眠れない、いらいらなどがある方、「リラックス動作法」の先生が来られています。

希望される方は○○の部屋までお越しください』と放送を入れてもらった。実施期間は各避難所によって異なるが、3月初旬から7月中旬までであった。頻度は、週に2回から隔週に1回とニーズに応じて変えていった。いつも2名から10名の避難者が訪れ、延べ300名以上の人に動作法を行った。避難者は家屋の倒壊などの喪失体験とプライバシーのない避難所生活で心身ともに疲れ果てていた。

 私たちは被災体験については尋ねず、ひたすら心地よい体験ができるように関わった。もちろん、動作法を終えて、悪夢を見ることなどを語られた方はおられた。

3月頃は余震の恐怖がまだあり、避難所でじっとしていることを余儀なくされていた。多くの被災者のからだは全体的にじわーとした硬さをもっていた。動作法をする中ですぐにその硬さを弛められるようになった。「目の前がすっきりした」「メガネをかけたようにはっきりした」と言った知覚世界の変化をうかがわせる内省が多かった。4月になって、仕事を再開したり、仮設住宅に移ったりするようになり、「動かせるけど弛められない」人が多くなった。不眠を訴える人には、震災前から不眠傾向にあり震災を期に症状が憎悪した人もいた。彼らはからだを弛める感じが非常に乏しかった。また、動作法を受けに来た人の中に精神疾患の方がいたが、精神的不安定さとからだの感じは見事に対応していた。

                                                                     1995年10月7日

「リハビリテイション心理研究」特別報告より被災地だよりNo.1 1996.4.20
_________________________________________________________

兵庫県臨床心理士会発行「被災地だより」より抜粋

地域型仮設住宅でのリラックス法の試み         兵庫教育大学・冨永良喜
 
 被災者は避難所から仮設住宅に居を移した。マスコミ報道も震災関連はめっきり少なくなったが、秋になると
仮設住宅での孤独死が連日小さく新聞に載りはじめた。死因が肝硬変とあるのはアルコール依存のようだ。年齢も決して高齢ではない。
 西宮の広川内科クリニックに時たまでかけたり、「